製造業に限らずあらゆる業界で「DX」、いわゆるAIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務を変革する抜本的な取り組みの推進が求められています。
生産現場へはAIの導入やERPなどの基幹システム、総務部門へはHRシステムなどさまざまな業務部門へのデジタル化が進んでいます。そのなかでも取り組みが遅れているのがマーケティング分野のDXです。
2016年版のものづくり白書における「今後3年間に優先される投資分野」において、最先端テクノロジーや設備の拡張、従業員報酬と教育の増加といった生産現場および人事教育に対する投資意欲は海外企業に対して勝っていますが、広告・マーケティング、ビジネスモデルの変革などでは大きな開きがあります。さらに国を挙げてDXによる競争力の底上げを推進しているにもかかわらず、マーケティング分野でのデータ活用は進んでいないのが現状です。
これまで日本の製造業は「最安のもの」を生み出すことで成長してきました。その後、中国をはじめとしたアジア諸国に価格競争力を奪われた後は「最良のもの」を生み出すことで企業を維持してきました。しかし2009年には工業生産額で中国に追い抜かれ、海外企業の品質が向上するにつれ、品質の優位性も危うくなっています。
製品購買において価格は重要なファクターですが、中国・アジア以外の北米・ヨーロッパの企業に目を向けると必ずしも価格や品質が大きく日本製品を上回っているわけではありません。特許などの技術的優位性にしても、新しい代替技術で対応できることも多くあります。そこで注目されるのが、マーケティングです。
コロナ禍で改めて見直されるウェブサイト
製造業におけるマーケティング活動で最もなじみ深いのが「展示会」でしょう。自社製品・技術に実際に触れていただいた見込み客に対して、後日アプローチをするという手法は有効です。しかし長引くコロナ禍で新規顧客獲得の有力な手段であった展示会やセミナーが実施困難となり、テレワークが当たり前になったことで新規顧客や見込み顧客に会うことも難しくなっています。これまでの常識であった対面でのビジネスが困難な今、顧客と企業の接点が非対面の”インターネット”に集約されてきました。
そこで今、改めてウェブサイトの重要性がクローズアップされてきています。実際にコロナ禍において多くの企業がウェブサイトの改修図っている、または予定しており、テレワークやオンライン展示会の普及が進む中、営業・販促の手法もWEB活用による施策強化を重視する様子が伺える結果となっています。
ウェブサイト改修2つの視点
ウェブサイトを改修する場合に必要な視点が2つあります。
1つめは「ブランディング」の視点です。ブランディングというと、車やアパレルなど特定の製品を消費者に向けて宣伝する「BtoC」視点のイメージがあります。企業間取引を行うBtoB製造業では、製品の検討から販売までのプロセスが複雑であり、消費者とのつながりをイメージしにくいためブランディングが重要視されていないのが現状です。しかし、これは大きな間違いです。
現在では誰もが情報のアンテナを張りやすい環境になり、あらゆる面で競合他社と比較されやすい状況となりました。そのためビジネスだけでなく「広報・宣伝」、「採用・人事」など多岐にわたって、ブランドがあるほうが圧倒的なアドバンテージとなります。
2つめの視点が「マーケティング」の視点です。
展示会を例にとると、展示会の来場者は御社の製品や技術が自分たちの課題解決につながることを期待しています。それがわかっているのでどのブースでも来場者にサンプル提供やデモンストレーションを行いながら、ユーザーの情報を収集し、その場もしくは後日の商談へとつなげていきます。
ウェブサイトも同様です。BtoB製造業のウェブサイトを(わざわざ)訪問するユーザーは有望な見込み顧客のはずです。展示会の時と同様に御社の製品や技術が自分たちの課題解決につながることを期待しているのです。
ではここであなたに聞きます。御社のウェブサイトには訪問してきたユーザーが期待する情報があるでしょうか。
訪問者は(あなたがそうであるように)欲しいものがなければすぐにブラウザのバックボタンを押して、検索結果のページに戻るでしょう。そして同業他社のウェブサイトを巡回します。そういう状態では、どれだけ検索広告やSEO対策にお金をかけても、問い合わせはほとんどないでしょう。
ウェブサイトの改修というのは見た目のデザインを格好良くしたり、スマートフォン対応にすることでは決してありません。そんなところにコストをかけるのではなく、ユーザーのわざわざ自社のウェブサイトを訪問する理由を真剣に考え、彼らが欲しい情報をわかりやすく伝えるためのコンテンツ制作や、ケーススタディや技術情報を学べるホワイトペーパー製作とダウンロードできる仕組みづくりなどにかけたほうが良いということが理解できるでしょう。
もちろんそれらを勘案したうえで、必要な仕組みを導入できない、システム自体が古くてセキュリティの懸念があるなどの理由から全面的にリニューアルするということもあるでしょう。
そうした場合は時間も費用もかかりますが、自社のブランディングとマーケティングをいちから見直す絶好の機会となります。ぜひ良い戦略パートナーを見つけてマーケティングDXを推進してください。