医療機関のウェブサイトリニューアル事例

2023年09月01日 実績

医療機関は医療法によって広告規制がなされており、ウェブサイト制作時にも細心の注意を払う必要があります。

基本的には「虚偽広告」「誇大広告」「優良比較広告」「体験談」などが禁止の対象で、一般の企業活動で言うところの優良誤認(※)を禁止していると考えて差し支えないかと思います。

この広告規制は、一般的な保険診療を行っている医療機関よりも、美容関連やインプラントなど自由診療で行われる施術を想定としている部分が大きいようです。とはいえ一般的なクリニックにおいても意図せず誤解を受けるような企画や表現とならないよう注意を払いながら、ウェブサイト制作を行います。

 


※優良誤認:商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為


 

事例:犬塚外科クリニック様

https://i-s-clinic.com/

前職で担当させて頂いてから、時々ケガの治療でもお世話になっています。

長崎県佐世保市三浦町3-10
TEL.0956-22-4224

三浦町犬塚外科クリニック


 

事例:はたえ眼科様

https://hatae-ganka.com/

こたも前職で担当させて頂き、リニューアルも担当しました。

長崎県平戸市田平町山内免460-1
TEL.0950-57-0109

 


 

上記サイトのリニューアルは、スマートフォン対応が一番の目的でした。コンテンツについては新しい診療(施術)や設備機器の追加、差し替えはありましたが85%は継承しています。

一般のクリニックであれば閲覧者は今まさに受診したい方となります。その際に閲覧するデバイスはほとんどスマートフォンと考えて問題ないでしょう。近年のスマートフォンは画面が大きくなったとは言え、PCサイトがそのまま表示されると読みづらいためサイトからの離脱だけでなく、他のクリニックへ患者さんが流れてしまうことも懸念されます。

患者さんの利便性を第一に考え、情報は更新されなくても、システムはモバイル(スマートフォン)に最適化されることをオススメします。

 

 

パーパス策定支援とウェブサイト制作【純粋持株会社】

2023年08月12日 実績

 

FA(ファクトリーオートメーション)の電機制御などを主な事業とする宮本電機株式会社。将来の事業拡大を見込み、新たに持株会社を設立されました。今回はその持株会社であるMTEホールディングス株式会社のパーパス策定およびウェブサイトの立ち上げを支援しました。

 


 

持株会社には事業持株会社と純粋持株会社があります。事業持株会社は子会社の株式を保有することによって経営管理等の企業の統治を行うことに加え、それ以外の事業も自ら行います。対して純粋持株会社では自ら製造や販売といった事業は行わず、子会社の株式を所有し、事業活動を支配することだけを目的とします。
MTEホールディングスは後者の純粋持株会社として設立されました。

 

今回のウェブサイト制作においては、持株会社と事業会社の関係性を明らかにしグループの事業像を明確に示すこと、そしてグループとしての存在感と魅力をしっかりと示すことを前提とすることから、グループとしてのパーパス(存在意義)を定義し、発信していくことになりました。

MTEホールディングとして経営計画は策定されていましたが、パーパスは策定されていませんでした。そのため、一からパーパス策定の支援を行いました。
また将来に向けたグループ全体としての事業ビジョンについても整理を行い、経営計画との整合性を持たせたコンセプトを立案・策定を行っています。

 

 


 

ウェブサイト制作においては「何を」(What)ではなく、「なぜ」(Why)の視点で情報を整理していく必要があります。

「何を」(What)を前提にしたウェブサイトであれば手持ちの情報を体裁良く見せるだけで終わりです。デザイン的なインパクトだけ求めても、共感できる情報がなければ、結果としてホームページを見る人に対して何のインパクトも残しません。

 

「なぜ」(Why)の視点からプロジェクトをスタートさせた場合、手持ちの情報だけではしっかり説明できないケースが多いです。

「なぜ、この事業を行っているのか」「なぜこういった取り組みを行っているのか」ということをきちんと説明するためには、自社に対する深い洞察や,時には新しい視点が必要となります。それは恐らく経営者の頭の中だけにあって、外部に対してうまく説明できなかった「想い」あるいは「志」といったものであり、それこそがステークホルダーが共感するポイントです。しかし簡単に言語化できるものでもないのがやっかいなところです。

 


 

ウェブサイト制作において、つむぎラボでは情報を整理することはもちろん、経営者との対話やインタビュー、あるいはワークショップなどから表層には現れていない「志」や「想い」を丁寧に掘り起こし、それらを新しい『価値』として言語化していきます。時間はかかりますが、それ分重みとインパクトがあるものとなります。

それだけの時間と手間を掛ける理由は、ウェブサイトは外部発信の手段だけでなく、流通するあらゆる情報のハブとなる重要なツールだからこそ、掲載される情報は企業自身とステークホルダーにとって価値あるものでなければならないと考えるからです。

ホームページのリニューアルというのは、バラバラになっている情報を整理するだけでなく、経営者が制作に関わることで深い洞察と新しい視点が得られる意義深い機会です。つむぎラボではブランディングやパーパス策定のサポートによって、体裁を整えるだけではない企業経営の寄与するウェブサイト制作のサポートを行っています。

 


CL:MTEホールディングス(http://mte-holdings.co.jp


 

ブランドロゴの重要性

2023年05月22日 お知らせ実績

 

 

ブランドロゴは企業やブランドの顔であり、企業ブランドのアイデンティティを視覚的に伝える重要な役割を担っています。ブランドロゴの作成・変更の際にはデザインだけでなく、ロゴに込める想いやストーリーが重要な要素となります。

 

ブランドロゴの歴史

ロゴの正式名称は「ロゴタイプ(logotype)」であり、図案化・装飾化された文字列です。また私たちが日常口にする「ロゴマーク」は和製英語です。
ロゴは古代メソポタミアで所有者を示すたに使われていた「円筒印章」が起源とされ、時代と共に家紋や紋章のように「人やものが何であるか」を表すアイデンティティとして使用されるようになりました。

私たちの身の回りには企業ロゴやサービスロゴ、商品ロゴなど、さまざまなロゴがあります。形状としては企業名などの文字で作られた「ロゴタイプ」と図形で作られた「ロゴマーク」の2種類がありますが、ロゴタイプとロゴマークの組み合わせも含めて「ロゴ」と一括りにされる場合が多いようです。

 

有名なブランドロゴの例

【ナイキ】

ギリシャ神話の勝利の女神ニーケー(大志と勝利)の翼をモチーフにしていて,躍動感とスピード感を表現しています。

【メルセデス/ベンツ】

星を意味するスリーポインテッド・スターの 頂点はそれぞれ「陸・海・空」を表現していて、優れた自社の理念や製品が業界の頂点にあることを強調する意味が込められています。

【アマゾン】

アルファベットの最初の文字であるaから最後の文字であるzに黄色い矢印で繋がることであらゆるものが手に入るということを示しています。同時にAmazonで購入する人々の幸せを表現したスマイルにもなっています。

 

ブランドロゴが重要な理由

ブランドロゴは、企業や商品・サービスのメッセージや思いを視覚化して伝えるものなので、理念や使命、コンセプトといった考え方を元に制作する必要があり、かつ自社「らしさ」を表現した個性的で印象的なデザインである必要があります。

 

有名な企業のブランドロゴにように「かっこいいロゴ」「オシャレなロゴ」にしたいという気持ちは分からなくはありません。ビジュアルのイメージやインパクトを重視することは大切です。しかし、企業が伝えたいメッセージやブランドイメージが連想できなければ、ブランドロゴによるプラスの効果は薄れてしまいます。

見た目や好みだけで決めてしまうと、社内外に「どうしてこのロゴなのか」という説明がつきません。理念や使命、コンセプトなど、しっかりとした考え方をベースにしたストーリーがあるからこそ、社外からは共感され、社内からは誇りを持って受け入れられ、帰属意識が形成されます。

例えば武士が戦いを繰り広げた時代の日本では、戦(いくさ)の際に武士や兵は藩のロゴ(家紋)が入ったのぼりを掲げ、忠義と共に戦う意識を高めました。
これを現代の会社に置き換えてみると、理念や存在意義に共感して集まった社員が活動するうえで、ブランドロゴは社員であることの誇りとモチベーション、帰属意識を確認し高めるためのものと言えるのではないでしょうか。

 

街中にはさまざまなロゴが溢れている

ブランドロゴ制作のステップ

①制作目的の整理

どうしてロゴを制作するのか、その理由を明確にする

②ロゴに込める思いの整理

企業理念などから重要なキーワードを抽出する
ロゴを通じて自社のことを誰に、どのように思われたいかまとめる

③デザインエレメントの整理

社名や理念から想起されるモチーフや色、音、香りなどのリスト化

④デザインの具体化

アイデア出しからラフ案、バリエーション検討、類似ロゴの検証

 

ブランドロゴ制作の注意点

①自社「らしさ」を表現する

自社「らしさ」や特徴、提供価値などを表しているかどうかチェックする

②覚えられやすい文字にする

ブランド力がない間はロゴマークだけで自社を想起してもらうのは難しいため、「読みやすく」「発音しやすい」ものを心がける

③実際の使用シーンを想定する

店舗やパッケージ、ウェブサイト(ホームページ)に表示された時の印象まで考えてデザインする

④見たことがあるようなデザインにしない

類似したロゴがないか確認する

 

 

ブランドロゴの管理

ブランドロゴは作成したら終わりではありません。正しく世に広まってこそ真価を発揮するものです。誤った使用法として良くあるのがワード文書にロゴを挿入した際に縦横比を変えてしまう例です。ブランドロゴに理念が込められているなら、変形されたロゴは理念も曲げられていると解釈されても仕方ありません。

他にも色や配置を変更したり、装飾を追加しないようにするためにもガイドラインを定め、間違った使われ方をしないようにします。野放図に使用されるブランドロゴは企業ブランドを毀損してしまうのです。
使用方法を規定し、あらゆるツールに統一された印象を社内外に持たせることで初めてロゴがブランディングに寄与するようになります。

 

制作事例

Cross E ホールディングス株式会社
相伽和店
VSIDE(佐世保市産業支援センター)

 

 


 

ブランドロゴにはひと目見ればブランドイメージやコンセプトが伝わるだけでなく、権威性やブランド価値を高める役割を果たしています。

ロゴ制定時に認知度の高い企業であっても、企業の認知度が上がるにつれてブランドロゴの認知度も高まっていくものです。そうするとブランドロゴだけで自社の事業や商品・サービスをアピールできるようにもなります。

もし事業は順調だけれどもブランドロゴが社内外に浸透していないという場合は、ブランドの浸透という意味で大きな損失です。自社の理念や想いを込めたロゴを世に広め、自社のブランドをより強いものにしていきましょう。

 


 

 

 

事業拡大を目的としたブランディング(半導体製造装置保守・メンテナンス会社)

2023年05月17日 実績

 

 

佐世保市で半導体製造装置の保守・メンテナンスを行う「有限会社新和機工」さまのブランディングを担当しました。

 


 

コロナ禍のサプライ・チェーン瓦解によって半導体が世界的に不足し、あらゆる産業で影響を受けたと記憶されている方も多いでしょう。しかしコロナ禍直後の世界全体の半導体デバイスの生産量は過去最高を記録しており、半導体不足の原因はサプライ・チェーンの問題ではなく、世界的な半導体への需要増にあったようです。つまり私たちは家庭生活から産業活動まで半導体なしには成り立たないということです。

2023年のゴールデンウィークでは自動車関連を始め大手の工場では操業を休止したようですが、半導体関連の工場ではほぼフル稼働が続いていたようです。今後しばらくは、半導体の需要が増えることはあっても減ることはないでしょう。

 


 

「新和機工」様は半導体業界において、半導体製造装置のメンテナンスを主に手がけます。半導体製造装置は数ある生産設備のなかでも最先端かつ極微細な精度での作業が求められます。その技術力と最先端の設備に日々向き合うノウハウと経験が強みです。

今回のご依頼は今後の業務拡張を見据え、広く認知を拡大するためのウェブサイト(ホームページ)の立ち上げと、対面における新規開拓および商談の際に使う会社案内を現在使っているワード書類からフォーマルなパンフレットに更新したいという内容でした。

今回のプロジェクトにおいても過去のクライアント同様、ブランディングを軸に進めることを提案し、快諾いただきました。

 


 

これまで会社を紹介するツールは会社概要と実績を列挙したワード書類しかありませんでしたので、まずはどのような会社であるのか、その生い立ちや業務の内容、業界の状況、社長の想いなどをヒアリングするところから始めました。

次の段階として、本来はプロジェクトメンバーを選出いただき各種ワークや討議セッションを設ける予定でしたが、業務拠点が各地にありメンバーが一堂に会すうことが難しいことから、アンケートに予定を変更。

今回ご用意させていただいたアンケートは約40ほどの設問があり、回答にも時間がかかることが予想されたため主要なメンバーだけでもとお願いしていたのですが、社長の肝いりでほぼ全社員の方の回答が得られたのは驚きで、ウェブサイト(ホームページ)開設への並々ならぬ意欲を感じました。

 

 

アンケートから見えてきた会社の強みや課題をもとにウェブサイト(ホームページ)の構成要素を抽出し、素案を作成。素案に対し何度も全社員さんからフィードバックをもらい調整を繰り返しながら、内容を詰めていきました。

今回のプロジェクトにおける最も大きな特徴は、この社員さんの参画意識です。社長からの業務命令的な側面は多少はあったのかもしれませんが、こちらからの投げかけに対してみなさん大なり小なり自分の意見や考えを返してこられました。恐らく普段の業務でも同じ熱量で真摯に対応しておられるのでしょう。その結果、完成したブランドアイデンティティとタグライン「高純度エンジニアリング」はみなさんが腹落ちするものとなったのです。

ウェブサイト(ホームページ)の構造や仕様はシンプルなものですが、そこに込められたメッセージは想いを伝えたい相手(未来のクライアント)へしっかりと伝わるものとなっています。

 

 


 

「ブランディング」「ブランド」というと、どうしても世界的なハイブランドを連想しがちで、「なんとなくかっこいいロゴやデザイン」だったり「雰囲気が良いキャッチコピー」に目が行きがちです。

しかし見た目や雰囲気だけで制作したデザインやキャッチコピーは、なんとなくどこの会社にも当てはまるものになってしまいます。他社にはない自社独自の「らしさ」や「個性」の積み重ね、それが結果として「ブランド」の確立につながります。

もちろん時代にフィットするデザインや言葉遣いというものは時として必要で否定するものではありませんが、「なぜそのデザインなのか」「どうしてそのワードを使っているのか」を説明できなければブランドは成り立ちません。
今回は各種ワークや討議セッションの機会は設けられませんでしたが、社員さんの参画意識の高さに助けられたプロジェクトとなりました。

 


 

ブランディングのためには自社の姿を認識し、どうありたいのか、お客様にどう思ってもらいたいのか、そしてどこへ向かうのかを明確にする必要があります。
そこがしっかりしたうえでなければ、デザインやキャッチコピー、ホームページ、TVCMなどの外部発信は力を持ちません。

「売る仕組みづくり」であるマーケティングに対してブランディングは「売れ続ける仕組みづくり」と言われます。どちらが上位の概念であるとか、優先すべき戦略であるとかではなく、どちらも大切なものですし、戦略立案の際に使用するフレームワークも共通のものが数多くあります。
つむぎラボではブランディングはもちろん、マーケティングの支援も行っています。お気軽にお問い合わせください。

 


CL:新和機工(https://shinwa-kikou.co.jp


 

あなたの会社をブランドにする方法

2023年04月17日 お知らせブログ

 

最近、「ブランド化したい」「我が社にはブランドが必要だ」「うちにはブランド力が無いからなあ」ということをよく耳にするようになりました。

ブランドという言葉は私たちの生活の中で馴染みのある言葉ですが、実際にブランドがなんなのかを理解している人はそう多くないと感じています。

ここでは皆さんに知っているようで知らない、分かっているようで分からないブランドについてお話しします。

 


この記事は2022年12月5日にVSIDE(佐世保市産業支援センター:https://vside.jp)に寄稿したものです。


 

企業経営のなかでブランドが語られるようになってきたことの背景には、従来のマーケティングや販売促進の打ち手では対応できない問題があり、それをブランドを作ることによってなんとか打開したいという思いがにじみ出ているようにも感じます。

しかし「ブランド化したい」と思っても、ブランドが一体何かを知らないとブランディング(ブランド化)はできません。会社や商品・サービスをブランディング(ブランドづくり)していくためには、まずはブランドとはどういうものなのかを知る必要があります。

 

みなさんが「ブランド」と聞いたときに思い浮かぶものは何でしょうか。ファッションに興味がある方はファッションブランドを連想しますし、クルマが趣味の方は憧れの自動車メーカーを思い浮かべるでしょう。こうした例に留まらず、食品などの生活必需品から嗜好品まで、私たちはさまざまなブランドの商品に囲まれています。この場合は大抵、ブランド=著名な商品名(会社名)と捉えられていることが多いようです。

 

またブランドとは商品や会社の特性を表すと考える方もいます。「品質が良い」「高級・高価」「良く名前が知られている」「信頼や安心」などです。商品を紹介する際にわざわざ「信頼のブランド」などと枕詞を使う場合もあります。ブランドのロゴやマークが入っていることで、その商品の品質が保証されていると感じることなどが挙げられます。

 

例えば、あなたが店頭でステーキ肉を買おうとしているとします。どちらも霜降りの具合や色艶など見た目はほとんど変わりません。しかも値段は全く同じです。ただし一つだけ違う点があります。片方のお肉には「松阪牛」という札がついていて、もう片方のお肉には単に「国産」と書いてある札がついています。さて、あなたはどちらのお肉を買うでしょうか。

 

 

この問いに対してほぼ100%の方が「松阪牛」という札がついている牛肉を買うと答えます。見た目、価格が同じでもブランドがあるか否かで買ってもらえるかどうかが大きく変わってくるということです。さらに言えば、価格が高くてもブランドのお肉を買うという層も一定の割合で存在します。(品質は同じとしても!)そのためどの会社もブランドをつくりたい、ブランドになりたいと考えるのは至極当然のことです。

 

ここで大事なことは「松阪牛」という札をつけるだけでブランドになれる訳ではないということです。ブランドはブランドになるべくしてなった理由があります。ブランドになるために行うべきことがあるのです。そしてそれらを実行していくことでブランドへの道が近づいていきます。

 


 

 

ブランドの語源は古代ノルド語の「Brandor(焼印をつける)」という意味の言葉が語源とされています。

 

アメリカのマーケティング協会では「ブランドとは、個別の売り手の財やサービスを識別させ、競合他社のものと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、およびその組み合わせ」とされています。つまりブランドの基本的な定義は、識別するための印です。しかし識別されるだけではブランドであることのメリットが享受できません。識別されたうえで購買されることが目標です。そのためには商品やサービスを通じて高い満足を提供し続けていく必要があります。

 

焼印の例で言えば、最初は自分が所有する牛と他人の牛を区別する手段として「焼印」が使われていました。次に牛が市場に売りに出される際には、焼印は買い手の目印となります。この段階では焼印は「Aさんの牛」「Bさんの牛」を区別するための単なる目印です。しかし買い手が牛の品質に満足すると、次も同じ焼印を目印にして牛を買うようになります。その満足が繰り返されることで、次第に買い手の間に特定の焼印に対する評判が広がっていくことになり、焼印が信頼の証(ブランド)として知られていくことになります。その結果、この焼印の牛を選べば間違いないという信頼が確立し、他の牛よりも優先的に売れていく、しかも高値で売れていくようになります。ここまで来ると立派なブランドです。

 

ブランディングとは商品の販売拡大のためにあるものと誤解しがちです。実際、「ブランド化したい」「ブランドを作りたい」と考える企業は自社の商品・サービスを購入してもらうことを目的としています。これは間違いではないのですが、販売を拡大するだけであればマーケティングを強化すれば良い話です。ではなぜブランディングが必要なのでしょうか。

 


 

マーケティング立案の際に使う「4P分析」という代表的な手法があります。これは市場における4つのP、すなわちProduct(製品)、Price(価格)、Place(立地)、Promotion(販売促進)を分析することで販売を強化しようとするものです。この4つの視点からわかるように、マーケティングは顧客を増やし、販売数を増やすことが目的です。「売る仕組み」づくりとも言い換えることができます。

 

 

ブランディングにおいてもマーケティングは重要で、その立案過程ではマーケティングと同様の手法を用いることもあります。しかしそれはブランディング施策の一部でしかありません。焼印の例では信頼が確立されることで、優先的にかつ高値で牛が売れるようになると書きました。顧客との関係性づくりに力点を置き、売るだけではなく「売れ続ける仕組み」をつくるのがブランディングです。

 

あなたの会社の商品・サービスを買ってもらう場合を考えてみましょう。マーケティング的にはライバル会社の商品よりもパッケージを目立たせて、値引きをすれば売上は伸びるでしょう。またテレビCMを集中的に投下することで消費者の認知も高まり、店頭でライバルよりも目立つ売場を確保でき、さらに売上は伸びるでしょう。

 

しかしライバルが自社よりも値下げをしたら?より大きなキャンペーンを展開したら?

顧客は喜ぶかもしれませんが、消耗戦となりどんどん体力を奪われていきます。こうした売上競争で勝つのは体力のある方ですが、勝った方も疲弊することは間違いありません。値引きや広告によって「買ってください」とアプローチするのがマーケティングだとすれば、ブランディングは顧客に「このブランドが好きだから買う」と思ってもらい行動を促すことです。

 

ブランディングでも顧客から認識してもらうためにマーケティングや広告を行いますが、必須ではありません。一時的な売上をあげることよりも、顧客と良好な関係を長期的に築くことを目的としています。

 

例えば「おしゃれな洋服を買いたい」「頑丈な車が欲しい」「最高の休日を楽しみたい」「おいしいレストランに行きたい」と顧客が思った時に真っ先に思い浮かべ、買っていただくための包括的な施策がブランディングです。価格ではなくブランドによって商品・サービスが選ばれる時、価格への抵抗は少なくなります。また多少品質で劣っていたとしてもブランドへの愛着が上回ることで購買につながります。

 

顧客の心の中にブランドとして定着するまでには、商品・サービスを通した高い満足や憧れなどポジティブな記憶や感情が継続的に蓄積されています。だからこそ「ここぞ」という時に選ばれるのです。

 

このようにブランディングは、自社や商品・サービスが「こう思われたい」というイメージを発信し、顧客に「こう思うよ、こう思った時には買うよ(買いたいよ)」と考え、行動してもらうようにする活動なのです。

 

世界的なブランドコンサルティング会社であるランドーの創始者ウォルター・ランドーは「製品は工場で作られるが、ブランドは心のなかで創られる」と言いました。

あなたが目指したいブランド、つくりたいブランドとは、顧客にどう思われたいものですか?

 

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