
タナベコンサルティングが「2025年度 長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」結果をプレスリリースしています。(※)
弊社として興味深い内容でしたのでご紹介します。
まず、調査ではサマリーとして以下の3点が挙げられています。
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このなかでも3つ目の、パーパス・MVVの見直しが進んでいるという状況は弊社にとっても見過ごせない内容です。
リリースでは以下のように報告されています。
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長期ビジョンとあわせたパーパス・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定・見直しを「実施した」と回答した企業は57.8%であり、前年(2024年度調査)の38.8%から大きく増加しました。一方、「実施していない」との回答は26.6%で、前年の半数近くから2割台に減少しました。
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この取り組みの背景には各社各様の事情があると思いますが、以下のような視点があるのではないかと思います。
人的資本経営への対応
企業価値の源泉が「ヒト」に移り、従業員のエンゲージメント(共感)が重要だとする人的資本経営が注目を浴びています。MVVに関連して言えば、従来の経営理念や社訓などでは、新しい価値観や多様性に対応できず、求心力が低下しているのではないかと推察されます。
どんなに立派な内容であっても共感できない「お題目」となっていては、企業の推進力たり得ません。
時代、人にフィットするMVVを策定し、働く意義(パーパス)を明確にすることで、人的資本への投資効果を高めることができると考えます。
深刻な人材不足
人材不足とは言うものの、中小企業に比べれば大手中堅はまだ人材獲得ができていると考えられます。待遇面などで劣る中小企業が人材を獲得するためには、給与以外の「共感」が採用・定着の鍵です。「誰かの役に立ちたい」「社会に貢献したい」そんなモチベーションに応えるための、会社の存在意義が求められています。
魅力的なMVVを採用の切り札とし、従業員のロイヤルティを高めることで採用を増やせるとともに、定着率も向上すると考えます。
AIの台頭と役割変化
人材不足も相まって、DXの導入やAIによる業務代替が進んでる、というよりもやらないと業務が回らない時代が到来しています。DXやAIでできることは任せ、「人でなければできないこと」へのリソース集中が不可欠です。
MVVを策定することで「何をすべきで、何をすべきでないか」というブレない判断軸を手に入れることができると考えます。
会社の理念がしっかりしていれば、経営者のカリスマに頼らずに組織を前に進めることができます。理念の必要性が言われるのは今に始まったことではありません。例えば中小企業家同友会では企業の自主的近代化と強靱な経営体質をつくることをめざし経営理念を作ることを推奨しています。それがしっかりと組織にフィットしているか、経営者自身で作ってしまうことで結局経営者の映し鏡となっていないかというチェックは必要でしょう。
理念は企業という法人が携えるもの。つまり社員と経営者が共に理念という共通の目標のもとで進んでいくためにあります。そのためには組織の歴史や文化・風土をひも解き、誰もが腹落ちするものへと丁寧に紡いでいかなければならないのです。
