人間らしさを表現するためのブランディング 〜 企業の「らしさ」を見つけ出す〜

人間らしさを表現するためのブランディング 〜 企業の「らしさ」を見つけ出す〜

 

AIが文章を書き、デザインを整え、分析まで行う時代になりました。ちょっと前までは「あ、これはAIの文章(画像)だ」とわかったものですが、AIはすさまじいスピードで進化し、最近ではAIが作ったのか、人間が作ったのか判別できないくらいまでになっています。しかし便利になった一方で、AIを利用した多くの企業の発信は、どこか同じようになりつつあると感じていないでしょうか。
そんな今だからこそ「自社ならではの人間らしさ」を意図的に掘り起こし、整え、育てていく視点が求められているのではないかと感じます。

AI時代にあっていかにブランドを確立し、差別化していくべきでしょうか。

 

企業文化は確かに存在している、だけど形になっていない

企業文化や企業風土は、往々にして言語化されていないことが多いです。しかしそれは「存在しない」のではなく、空気のように当たり前すぎて見えていないだけです。

例えば、

  • 新人が困っていると自然に誰かが声をかける
  • 会議では上下関係より現場感覚が尊重される
  • お客様対応では「規程より人」を優先する

こうした日常のふるまいの積み重ねが、その会社の「らしさ」です。AI時代にブランドを確立するためには、まず「らしさ」の収集から始めましょう。


社員ワークショップやアンケートを通じて、

  • 大切にしている価値観
  • 誇りに感じている瞬間
  • 「自社らしい」と感じる行動・振る舞い

などといった「らしさの糸」を丁寧に拾い上げていきます。

プロジェクトの主体となるのは総務部門です。総務部門は、部署横断で人の声を集められるポジションであり、まさにこのステップのハブとして機能します。

 

「らしさの糸」をていねいに紡ぐ

集まった声やエピソードは、そのままではまだ「素材」にすぎません。次に必要なのは、それらを紡いでいく作業です。

ここで重要なのは、会社が持つ機能的価値と情緒的価値を分けて考えていくことです。たとえるなら、
機能的価値は骨格、情緒的価値は血や体温のようなもの。どちらが欠けても、人(法人)として成立できない要素です。

機能的価値
  • 会社が何ができるのか 数値やデータで表現できるもの(品質・スピード・正確さ)
  • 会社の骨格
情緒的価値
  • 会社がどう感じてもらいたいか
  • 数値やデータで表現できないもの(安心感・信頼感・人の温度)会社の血や体温

 

ブランディングとして「私たちは何ができる会社なのか」(What)だけでなく、「私たちはどんな姿勢で仕事をしている会社なのか」(Why)を明確にする必要があります。

数値やデータで表現できるものはすべて他社との比較対象となります。どれだけ優れている機能的価値も、いつかは追い越されて利舞います。その一方、数値やデータで表現できない価値は他社が真似できない自社ならではの価値です。

当たり前すぎて言語化できていない価値を棚卸しし、整理して見える形にしましょう。

 

 

ブランドは細部に宿る

整理された「らしさ」は、表現されて初めてブランドになります。ここで多くの企業が誤解しがちなのが、
「ロゴやコピーを変えればブランディング」というものです。

実際には社員の行動・振る舞いも含めたステークホルダーとの全ての接点における細部の一貫性が、ブランドを形づくっていきます。ただし表面的な接点における表現の一貫性を整える際にはAIは強い味方となるでしょう。

具体的には、

  • Webサイトの言葉遣い
  • 採用ページでの社員の語り方
  • 問い合わせ対応の一文
  • 社内での意思決定の基準  などです。

 

文章のたたきや構成案、情報整理はAIが担い、最終的なトーンや判断は人が行う。料理で言えば、下ごしらえは機械に任せ、味付けは料理人が決める感じです。

この段階で総務部門が関与することで、広告代理店などの調整も含め「対外発信」と「社内の実態」のズレを防ぐことができます。

 

 

ブランドは育てるもの。ブランディングは続く

ブランドは一度形を整えたら終わりではなく、育て続けるものです。それがブランディングと言われる所以です。
事業環境の変化、社会の価値観の変化、社内の新陳代謝…さまざまな変化に対応しながら、ブランドも少しずつ変化をしていきます。

ステークホルダーとの関わりのなかで、ブランドを体現する主役はWebサイトやCMではなく、社員です。
社員がブランドを体現していなければ、どれだけWebサイトやCMで発信しても「絵に描いた餅」でしかありません。
ブランド研修、社内報、社内イベントといった日常的な社内活動のなかで「自社らしさ」を語り直す機会を持ち、一貫性を保つ活動を継続することでブランドの持続力を高めていきましょう。

顧客や取引先との関係も同様です。WebサイトやCM、キャンペーンなどステークホルダーとの接点で大切にすべきなのは“伝える”ことではなく、共に感じてもらうこと。共感の輪が広がることで、ブランドは強くなっていきます。

 

 

企業の「らしさ」は、経営を支える静かな力になる

ブランディングというと、どうしても「外向き」「広告的」なものに捉えられがちです。しかし本質は、組織の内側を整える活動です。

人が迷わず判断できる。
部署を越えて言葉が通じる。
誇りを持って会社の名前を語れる。

そうした状態は、採用、定着、信頼、そして業績に、静かに、しかし確実に効いてきます。

もし今、

  • 社内の価値観が見えにくい
  • 発信に一貫性がないと感じる
  • 「自社らしさ」を言葉にできない

そう感じているなら、ブランディングに取り組むタイミングかもしれません。
企業の中に、すでにある“人間らしさ”を一緒にひも解き、紡ぎ、未来につなげていきましょう。