「なぜ」という根と、「どこへ」という果実。 │ “ことば”が経営のリソースになる

「なぜ」という根と、「どこへ」という果実。 │ “ことば”が経営のリソースになる

 

経営を支える「ミッション」と「ビジョン」の正しい結び方

ミッションとビジョン。この2つの言葉はよく混同されますが、経営においてはまったく異なる「役割」を持っています。

つむぎラボでは、これらを単なるスローガンではなく、組織を動かすための「経営資源」と捉えています。言葉の定義を整理し、それぞれの役割を正しく理解することで、あなたの会社の想いは、より強く、より遠くまで届くようになります。

 

ミッションは「存在理由」、ビジョンは「到達地点」

最もシンプルに整理するなら、ミッションは「理由(Why)」、ビジョンは「風景(Where)」です。

ミッション(Mission)
「なぜ、私たちは存在するのか」。過去から現在、未来へと貫かれる、変わることのない「命題」です。

ビジョン(Vision)
「その先に、どんな景色を見たいのか」。ミッションを遂行した結果として現れる、未来の「到達点」です。

たとえば、「言葉の力で、企業の想いを社会に届ける」というミッション(理由)があり、その結果として「世界で最も愛されるブランドパートナーになる」というビジョン(目標)が生まれます。

ミッションという揺るぎない土台の上に、ビジョンという未来が築かれるのです。

 

登る山が変わっても、登る理由は変わらない

この違いは「登山」に例えると鮮明になります。ここに、より具体的な「地域密着の工務店」を例に挙げてみます。

とある工務店の場合

  • ミッション(登る理由)
    家族の笑顔が生まれる空間を守り抜く
  • ビジョン(目指す頂)
    2030年までに、県内でシェアNo.1の工務店になる

ここで重要なのは、「山(ビジョン)」は変わり得るが、「理由(ミッション)」は変わらないということです。もし市場環境が激変し、新築住宅(高い山)が売れなくなったとします。しかし、「家族の笑顔を守る」というミッションさえブレなければ、リフォーム事業や空き家再生(別の山)へとルートを変更しても、会社の軸は揺らぎません。「なぜ登るのか」という問いへの答えこそが、迷ったときの羅針盤になるのです。

 

時間軸で見ると「根」は深く、「枝葉」は伸びやかに

企業理念は「樹木」のように捉えると良いかもしれません。

ミッションは「地中の根」(過去・現在・未来)

創業者の原体験や譲れない想い。これは地中に深く張った「根」です。 時代や流行が変わっても、根っこにある「なぜやるのか」は変わりません。10年、20年と組織を支え続ける、不変の哲学です。 中小企業においては、社長の心の中にある「原風景」を言語化することが、強いミッションへの第一歩となります。

ビジョンは「未来の果実」(数年後の姿)

一方でビジョンは、成長した先に実る「果実」です。 5年後、10年後という区切られた時間の中で、「どんな会社になっていたいか」「社会に何をもたらしたいか」を描きます。 環境の変化に合わせて、より魅力的な果実(目標)へとアップデートしていく柔軟さが必要です。

 

ミッションとビジョン、その使い分けのポイント

言葉の役割を定義することは、そのまま経営判断のスピードアップにつながります。

判断に迷ったら「ミッション」を見る

新規事業や採用において、「これは自分たちらしいか?」「創業の想いに反していないか?」を問うときは、ミッションを基準にします。これは企業の「人格(生き方)」を守るためです。

推進力を生むなら「ビジョン」を掲げる

「次はここへ行こう」と社員を鼓舞し、具体的な戦略を立てるときは、ビジョンを使います。これは組織の「人生設計(マイルストーン)」を共有するためです。

 

 

まずは「想い」の言語化から

流行りのビジョン(目標)を先に作ってしまうと、競合他社との差別化ができず、いずれ言葉が形骸化してしまいます。 まず、「私たちは何者か(ミッション)」を深く掘り下げ、言葉にする。 その確固たる軸があって初めて、「どこへ向かうか(ビジョン)」という地図が描けます。

あなたの会社には、社員の誰もが迷わずに進める「言葉の羅針盤」はあるでしょうか?

 


 

「創業の想いはあるが、うまく言葉にできない」 「ミッションとビジョンが混ざってしまい、社員に伝わっていない気がする」 もしそう感じられたら、私たちにお話しください。

丁寧なヒアリングを通じて、あなたの内にある「想い」の輪郭を浮き彫りにし、経営の力となる言葉へと紡ぎ直すお手伝いをいたします。

つむぎラボの「理念策定(MVV)」支援